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平成7年1月阪神・淡路大震災
①被害状況
- 発生日時:平成7年1月17日5時46分
- 震源地:淡路島北部 (北緯34度36分、東経135度02分)
- 震源の深さ:16km
- 規模:マグニチュード7.3
- 人的被害:死者約6,434人、行方不明者約3人
- 建物被害:全壊約104,906棟、半壊約144,274棟、一部損壊約390,506棟
- 災害廃棄物発生量約1,450万トン(市町村による処理)
②政府の対応
- 1月17日発災、1月21日 兵庫県南部地震対策担当大臣、現地対策特別本部設置
- 関係省庁が連携して取り組む必要があるため、地震対策担当大臣特命室を設置
- 職員は11省庁から集合、即断即決
- 16本の特別立法措置
③災害廃棄物の処理
損壊した家屋、ビル等のがれき等の処置については、個人、中小企業の所有のものについて、市町の行う災害廃棄物処理事業として、特例的に解体費用についても公費で負担することとされた。国は、解体費用を含むがれき処理費用の1/2を補助するとともに、補助事業に係る地方負担額について災害対策債の発行を許可し、その元利償還金の95%を特別交付税により措置することとした。また、がれき等の処理を促進するため、自衛隊の協力を得るとともに、現地に設置された国・兵庫県・関係市等から構成される災害廃棄物処理推進協議会を通じて、仮置場の確保、破砕・焼却処理の設置などを支援した。そのような取組みにより、がれき等処理は平成9年度までにほぼ完了した。
余震等による二次災害を防止するため、被災地方公共団体からの要請を受けて、建設省、住宅・都市整備公団(以上、当時)、他の地方公共団体や民間ボランティアの建築技術者により、被災建築物の応急危険度判定支援を行った。
また、建設省(当時)等においては、地震により六甲山系等の土砂災害に係る危険箇所等に、ビニールシートの敷設、土留工、仮設落石防護棚の設置等の応急対策を実施した。さらに、このうち、土石流危険渓流32渓流、地すべり、がけ崩れ34箇所について応急対策を実施するとともに、砂防事業、地すべり対策事業、急傾斜地崩壊対策事業の災害関連緊急事業等により土砂災害防止施設の整備を緊急的に実施した。
その後、国土交通省では応急危険度判定を行う建築技術者の要請・登録や応急危険度判定マニュアルの作成など、実施体制の整備に努めている。また、土砂災害に対して、危険区域の周知、警戒避難体制整備、住宅等新規立地の抑制などを盛り込んだ土砂災害防止法が平成12年に制定された。
④制度的・財政的支援
国庫補助の引き上げや地方財政措置
政府においては、阪神・淡路大震災の被害の甚大性等に鑑み、阪神・淡路大震災を激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律に基づく激甚災害に指定した。これに加え特別の措置として「阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」が平成7年3月に制定され、被災地域の早期復興と住民生活の早期安定・再建を図るとともに、地方公共団体、公的機関等の財政負担を軽減した。
具体的には、公共土木施設、学校、社会福祉施設、農地、農業用施設、農林水産業共同利用施設、社会教育施設、水道、廃棄物処理施設、火葬場、と畜場、公園、事業協同組合・商店街振興組合等の共同施設、卸売市場、鉄道、病院等の災害復旧事業等に対する補助率の嵩上げなど、特例措置を講じた。
さらに激甚災害法及び特別財政援助法の適用対象となった公共土木施設等にかかる事業について、補助災害復旧事業債の対象とした。また、災害救助費の国庫負担金を除いた地方負担分の全額について災害対策債の発行を許可することとし、その元利償還金について95%を特別交付税により措置したほか、阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律により特別措置を講じた上で、地方の歳入欠かん債の発行やその元利償還金について特別交付税措置をするなどの地方税の減収補てん対策を講じるなど、中央政府として幅広く被災地方公共団体の莫大な財政需要を支え、財政調整機能を発揮した。
⑤その他の対応
鉄道、道路
鉄道については、円滑な旅客・貨物輸送も確保しなければ国民生活に著しい影響を与えるおそれがあり、また、被災鉄道事業者がその資力のみによっては災害復旧事業を行うことが困難であることから、運輸省(当時)は災害復旧補助を行うとともに、日本開発銀行(当時)から低利の災害復旧融資を行い、平成7年4月1日にJR西日本在来線全線が開通し、8月23日に神戸新交通六甲アイランド線の開通により被災地域の鉄道不通区間はすべて復旧した。
道路施設については、神戸市東灘区の阪神高速3号神戸線の約630mにわたる橋梁倒壊をはじめ、地震発生直後には高速自動車国道、直轄国道において27路線36区間の通行止めを行った。
こうした反省を踏まえ、幹線道路のダブルネットワーク化や防災拠点の整備などの防災性向上のための幹線道路施設の整備を推進し、平成10年4月の明石海峡大橋の開通に合わせ、西神自動車道、阪神高速道路北神戸線・湾岸線、神戸西バイパスなどが開通した。
電気、ガス、水道、電話
全戸への応急送電による停電の解消は1月23日午後3時、その後も全国の電力会社からの派遣も受け、一日最大6,000人以上の技術系の復旧要員により本格復旧に取り組んだ。また、都市ガスについては、約1万人体制により、がれき堆積による道路封鎖等のためガス導管の復旧作業に取りかかれない一部の地域を除き、4月11日までに復旧作業を終えた。日本開発銀行(当時)はそれら被災施設・設備の復旧に対し、災害復旧制度を創設した。
水道施設については、全国43都道府県の水道事業者等から延べ約4万7千人の応援を受けて、4月17日をもって仮復旧を完了した。また、被災部分については耐震化を図りながら本格復旧事業が行われ、平成9年度に完成した。なお、水道施設の災害復旧事業に対して国庫補助の特例措置等を実施した。
ライフラインの防災性向上に向けて、例えば、神戸市の北部を走る市道山手幹線の地下に電気、ガス、水道、電話などのライフラインを埋設する「神戸山手共同溝」を整備するなどの取組みが進められている。
被災市街地復興特別措置法の制定
阪神・淡路大震災の被災地においては、地震の発生後直ちに、建築基準法第84条第1項の規定に基づき1ヶ月(後にさらに1ヶ月延長)の建築制限を実施した。しかし、広範囲かつ甚大な被害を受けた市街地を一刻も早く復興することと、無秩序な建築等により安全性・環境上劣悪な市街地が再生されることを防止することの両立困難な要請をバランスさせるため「被災市街地復興特別措置法」が制定され、建築基準法上の建築制限が3月17日に切れることを踏まえ、平成7年2月26日に施行された。
同法により、「被災市街地復興推進地域」の指定が可能となり、当該地域においては、災害の発生した日から起算して2年以内で建築行為等の規制がかかり、その期間内に、土地区画整理等の市街地開発事業や地区計画などの都市計画を定めることが市町村に課せられた。当初、16地区、289.5haが指定された。
面的整備事業の推進
阪神・淡路大震災は、都市計画や面的整備に関して、
- 木造密集市街地など都市基盤未整備の市街地で火災が多発し、広範な焼失が生じたことにより、防災性の向上に資する市街地の面的整備の重要性が認識された。
- 避難所、避難路、防災拠点等が適切に確保されていなかった地域において、避難、救援、復旧等の活動に支障が生じるなど、都市にとっての安全性確保のための施設整備の重要性が認識された。
- 耐震性の低い住宅等の倒壊により多くの犠牲者が発生したことから、住宅等の耐震性の確保の重要性が認識された。
これらを踏まえ、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅市街地整備総合支援事業など、密集市街地を改善する上で効果が高い面的整備事業を必要に応じて組み合わせながら道路、公園などと建物や宅地を一体的・抜本的に整備した防災性の高い都市づくりが進められた。
阪神・淡路大震災復興基金の設立
平成7年度から10年間、復旧・復興への各般の行政施策を補完し、被災者の救済及び自立支援並びに総合的な復旧・復興対策を機動的・弾力的に進めることを目的として、平成7年4月1日兵庫県・神戸市により財団法人阪神・淡路大震災復興基金が設立された。設立当初の基金規模は6,000億円(兵庫県・神戸市からの出資金200億円・長期借入金5,800億円)であったが、平成8年度に増額され、現在9,000億円となっている。
長期貸付金に係る地方債のうち、平成8年〜17年度にかけて、一部の利子の95%について普通交付税により措置されている。
これにより、応急仮設住宅における心身のケアやふれあい交流の場の創設、ダブルローン対策としての助成など、被災者のニーズにマッチした柔軟な対応を可能にした。